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第9回ものづくりワールド名古屋

 

日本滑り軸受標準化協議会、第26回総会を開催

 日本滑り軸受標準化協議会(PBSA)は3月29日、東京都千代田区の学士会館で「2017年度 第2回総会(通算 第26回総会)」を開催した。

 当日は、最初に挨拶に立った笠原又一PBSA会長(オイレス工業)が、「日本主導のTC123分科委員会:SC8(滑り軸受の計算法及び応用)がタイとのツイニングで設立されたことや、フィリピン版『滑り軸受ハンドブック』がほぼ完成しつつあること、会員の利便性を図るためのホームページのリニューアル作業が順調に進んでいることなど、PBSAの活動はほぼ計画通りに遂行されている」と述べた。

笠原PBSA会長笠原PBSA会長

 また、染谷常雄PBSA顧問は、「米国など世界経済が保護主義に向かっているが、標準化には自由貿易を促進する意義があり、我々PBSAの滑り軸受の標準化に関わっている人間は重要な使命を担っていると言える。自動車の電動化・EV化なども見据えつつ、進むべき方向を誤ることなく、知恵を絞って有意義な取組みにつなげてほしい」と訴えた。

染谷PBSA顧問染谷PBSA顧問

 続いて、鉄道総合技術研究所の柿嶋秀史氏より、「鉄道分野の滑り軸受と滑り軸受の電食」と題する講演が行われた。蒸気機関車の軸箱や主連棒の軸受、電気機関車の吊掛式主電動機の支え軸受、貨車の車軸軸受といった主な鉄道車両用滑り軸受を紹介、特に貨車用滑り軸受で見られ回転不良や焼付き、ひいては機器・装置の性能低下、さらには故障をもたらす恐れのある「電食」について説明。同氏らが電食の再現実験を通じて推定した、軸受面への摩耗粉の介在に起因する電食発生メカニズムについて解説した。車軸軸受など転がり軸受に置き換わった例がある一方で、「鉄道において、ダンピング特性など滑り軸受の特性を活かせる場所は少なくない」と述べた。

鉄道総研・柿嶋氏鉄道総研・柿嶋氏

 講演終了後は、2017年度 第2回総会に移行。2017年度の活動報告が発表された。また、今後の取組みとして、滑り軸受各社の製品カタログで引用するなど滑り軸受のISOを活用していることをアピールすることや、休会中の会員に活動再開を呼びかけてPBSAのさらなる活性化を図っていくこと、ホームページのリニューアルでは資料を検索・活用しやすいような分類や項目の設定を検討していくこと、出版されているISO/TC123(滑り軸受専門委員会)国際規格(IS)75件を購入し会員に有効利用してもらうようにすること、などを議論した。

 また、ISO/TC123国際議長の山本隆司氏(東京農工大学名誉教授)が、1968年にモスクワで第1回が開催されたTC123が本年50周年を迎えるため、50周年記念事業案として、①メンバー国の滑り軸受メーカーの紹介記事集の作成、②滑り軸受ISO規格のContents集の作成、③TC123およびSCのHistoryの作成、④ガラス製文鎮の作製と関係者への頒布、などがTC123国内委員会で発議されており、今後関係機関と協議していく計画を示した。

山本ISO/TC123国際議長山本ISO/TC123国際議長

 さらに、ISO/TC123平軸受国内委員会の活動状況報告では田中 正委員長(大同メタル工業)が、計算法ISのSR(見直し)が行われていること、2018年度にはフランス・ドイツの関係者の来日に合わせて国際交流会議の開催を計画していることなどを発表した。また、SC7において表面改質技術として、MoS2とDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を活用した摩擦低減効果に着目した規格化への取組みが進行していることを報告。MoS2では昨年5月に原案作成部会を発足、同年11月のマニラ会議で技術背景のプレゼンテーションを実施したことや、DLCについては日産自動車の研究成果に基づく密着力評価法の標準化案があり、これを標準化対象として今後作業体制を構築していくとした。

田中ISO/TC123平軸受国内委員会委員長田中ISO/TC123平軸受国内委員会委員長

 総会終了後の懇親会では、産業技術研究所の是永 敦氏が挨拶に立ち、「PBSAでは滑り軸受のメーカーと自動車メーカーなどのユーザー、アカデミアのチームワークによって我が国の自由貿易を促進する標準化作業が順調に進んでいる。MoS2およびDLCを活用した摩擦低減という日本の得意とする表面改質に関する標準化も強力に進めていきたい」と語った。

是永ISO/TC123平軸受国内委員会 委員是永ISO/TC123平軸受国内委員会 委員

 また、閉会の挨拶に立った山本隆司ISO/TC123国際議長は、「我が国の滑り軸受の標準化では、製品の高性能化に日々努力している滑り軸受メーカーと、滑り軸受製品を使用しているユーザー、滑り軸受の研究開発を支援する研究機関のチームプレイは日本の得意とする独自の強みで、このチームプレイがISO/TC123において日本主導の実用的な規格策定の成果に結びついている。このチームプレイの体制を継続しつつ、発展途上国に対する標準化活動の支援・協力を含め、標準化業務に邁進してほしい」と述べた。